詠み人知らず

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小さかったころ、鏡の前に立って懐中電灯で自分の目を照らしてみたことがある。
きゅーっとすぼまる瞳孔、虹彩のぎざぎざした花のような模様、古くなった蜂蜜みたいな色。こんなにきれいなものが、自分の顔にふたつ、嵌まっているのが変な感じがした。ずっと、日本人の目は黒いものだと思いこんでいたぼくは、そのときはじめて、自分のほんとうの目の色を知った。その表面には、どこか呆然としたようすでこちらを覗き込む、自分そっくりの姿がうつりこんでいた。

4/6/2024, 10:41:36 AM