087【懐かしく思うこと】2022.10.30
ひさしぶりに、母校のあたりをうろうろした。うちの小学校区は、初めて来たひとは、一度入ると必ず迷子になる、といわれるような、道も方位もカオスな地区だった。まあ、ほんとにちっこいころから補助輪付きのピンクの自転車で走り回ってたから、地元民にとっては、いうほどカオスな実感はなかったけどね。だけど、もう、20年くらいは前になるのかな、区画整理の対象になり、全部がガッとまっ平になった。新たに道が刻まれ、それから、ぽこりぽこりと新しい家が建ち、それなりにまた、街らしくなってきた。その新しく碁盤の目状に整備された道路を通っていると、たしかに、かつてはカオスだったんだな、ということが逆にわかった。そう、そのカオスぶりを思い出しながら、バイクをちんたら運転しながらうろうろしてたんだ。
区画整理がはじまったころは、ホントはここにはこんなふうに道が通ってて、魚屋の横に八百屋があって、抜け道はここで、なんてことを克明に思い出せた。だけどどうだろう。いまではうすぼんやりとしか思い出せなかった。こんなふうに、懐かしく思うことすら懐かしくなっていくのか。時の流れは残酷だとおもいながら、大通りへの交差点で、信号待ちしてたりしてた。
高校のときの通学路は、ここはモロッコかよといってもいいくらい、レトロで、路地が入り組んだ地域を通過してて、ママチャリで突っ込んでは、行き止まりに泣かされたり、見当はずれの所に出て、ムダに体力消耗したり。懐かしいほど最悪だった。ここもすこしずつだけど区画整理がはじまって、変に工事用の道がついてるものだから、ますますわけがわからなくなってる。この過渡期のわけのわからなさもいずれは消え去り、きれいさっぱり、ぴかぴかの道と、建て替えたばかりの家でいっぱいになり、懐かしく思うことすらも全部忘れられてしまうのかとおもうと、泣けてくる。
この地区のスクラップアンドビルドが終わったら、次もまた、別の地区に行政の手が入るんだろうな。まるで街が、戦前の模様が残った古い皮を脱皮していくのを、一生かけて眺めているような気分だよ。もし手に入るなら、その皮全部、私が貰っときたかったかもな。
10/30/2022, 1:35:37 PM