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約束だよ

ご飯を食べて、食器をシンクに運ぶ。めんどくさいなぁと思いつつ、蒸し暑くなってきたから放置したら地獄を見ることになるぞと自分に言い聞かせて、さっきやっとお気に入りのビーズクッションから立ち上がった。20歳ひとり暮らし。だから、洗い物はそれほど多くはない。手が荒れがちだからゴム手袋をはめて、水を出す。お茶碗を手に取って洗っていると、スマートフォンの通知が鳴った。スマートフォンはズボンのポケットに入れてある。部屋着にしているもうびろんびろんのポケット。メッセージ音なら後回しでもいいけれど、ててんてててん。ててんてててん。電話の音だ。誰だろう、こんな時間に。時刻は23時だ。うっかり彼氏?とか思うけどこの20年誰かと恋愛関係に発展したこともない。家族か、友達か…。でもこんな時間にかけてくることなんて滅多にない。よっぽどのことだ。と思うのと同時に慌てて手袋を外してスマートフォンを手を取り、通話ボタンを押す。
画面を見て、スマートフォンを落としてしまった。
ひ、。画面に女が写っていた。誰?
画面の左側だ、落ち着いて、これは自分だ、と思い直す。
しかし、
画面の女は言った。「約束だよ」と。
私は思った。「は?」と。

6/4/2025, 6:43:49 AM