Seaside cafe with cloudy sky

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【ジャングルジム】

◀◀【声が聞こえる】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















半分でまかせのアドリブは半分真実にもとづいた予定でもあった。エルンストの明日から六日間の休暇許可を得るため、イダ・スティール・プロダクツ社長がおわす社長室へとまっしぐらに向かっていたはずだったが、アランの物見高い行動によって事務所で予定外の道草を食ってしまったのであった。しかしそこで知った最新の情報により、無駄足を踏まずに済んだ二人はあらたな目的地を目指してメインフロアである事務所棟から外へ出、社長が居るという別棟の現場へと移動し、開けっ放しだった入口へ足を踏み入れた。そこは倉庫スペースのようで箱詰めされた製品の棚がズラリと並び、一見した限りでは人の姿は誰も見当たらなかった。が、見通しのきかない奥の方で北の言葉の掛け合いが聞こえ、その声に反応してエルンストがついてくるようアランにうなづきかけた。
「あれだ、居ました。行きましょうアラン、こちらです」
気配のある奥に向かいつつエルンストも北の言葉で呼びかける。「社長、ただいま戻りました!」するとわりと若い男の低いハスキーな大声が返ってきた。「おお帰ってきたか、甥っ子!ここだここだ!」迷路のような奥へ進んで行くと空棚の鉄骨ばかりがそびえるジャングルジムのような区画に入った。ぽっかり空いた隙間から顔が覗いて手を振っている。
「ギュンターも居たんだ、お手伝い?」
気付いたエルンストが歩みを止めず笑って話し掛けるとギュンターと呼ばれた隙間の男は面白く無さそうに顔をしかめた。
「こら、叔父さんと呼べっていつも言ってるだろ!」まったく!とさして怒っていない調子で独りごつ。エルンストと並んで歩くアランと目が合うと、やあ、と笑って後ろ被りの作業帽を脱ぎ軽く挨拶を交わしてきた。あらわになった男の髪は赤く波打つくせ毛で長く、後ろで一つに括られていた。一瞬彼が社長なのかと思ってみたが、パッと見た目はチャラい風体で、しかもエルンストの彼に対する少々雑な扱いにその考えを丸めて捨て、やあとアランも気安い笑みで挨拶を返しておいた。彼と社長が居るとおぼしき場所までまだ少し棚の迷路をぐるぐる周って行かねばならない。赤毛が顔を覗かせた空棚を通り過ぎたところでエルンストが南の言葉でアランに説明してきた。
「彼は僕の叔父でギュンター・ヴィルケ、同じく従業員なんです。主にCADデザイン担当。信じられないでしょうが、ここの素晴らしい建屋をデザインしたのが彼なんですよ」
わざと聞えよがしに言ったのであろう、聞こえてるぞ、エル!と辛口なエルンストの紹介に叔父も南の言葉で苦笑まじりに叱声を飛ばしてきた。微笑ましい叔父と甥の愉快なふざけ合い。イダ・スティール・プロダクツはいわゆる親族経営企業であり、ヴィルケの一族が中心となって切り盛りしているということを食事のおしゃべりでエルンストから聞いていた。部外者であるアランだが、傍から垣間見ただけでも確信できる、ここの職場環境の居心地の良さ、安心感、社員全体の仲の良さに、思わず深く憧憬の嘆声をこぼした。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

9/23/2024, 10:28:23 AM