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あの夜の雨の日の夢

まだ見ぬ人よ
今夜は星が出ないのですよ
雨の夜ですから
私のいる6次元にはいない人
あなたは高次元の人なのでしょう
いつも近くに感じる人だけど
きっと遠くにいる人

優しい雨がしとしと降る夜
自宅にある金魚鉢の小さな世界は
その透明な壁の向こうに
遠くの山々が霞んでいる

この世界には私しかいないと
思っていたけど
雨の雫が温度を持ち、頬をつたった
あまりにも優しい雨だったから
胸の奥には火が灯り
涙が溢れた

まだ見ぬ人よ
何処にいるの
冷たいアスファルトの上を
透明傘をさして足早に歩く人々
幼い頃見た一面のタンポポの綿毛も
透明だった
淡い光に包まれた草原と精霊の記憶

鍵を握りしめてバスに乗る
次の停車駅には
地獄の門のような扉があるに違いない
その扉の前で口笛を吹こう
リズミカルな雨音に 合わせ
ここにいるよ、と呟きながら
雨粒に身を任せる
黒い空に心を委ねよう

まだ見ぬ人よ
あなたはどこにいるの
扉なんてなかった
雨も止んでしまった
手に持っていた鍵は
ただのアパートの鍵

窓の外過去も未来も統合し
次元を超え
出会えることを信じていた

いつかこの街の喧騒の中で
私の肩を叩く人がいる
あなたは誰ですか?
静かな瞬間を見つけ、
あなたと交わるその日を
心の奥で描いている

雨が止 んだ
新たな物語が始まる
まだ見ぬ人よ、
どうか、
私の元へ

1/12/2025, 7:11:23 PM