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神様が舞い降りてきて、こう言った。

幸せだとかを一切削ぎ落としたような人生を送っていた。
37歳、婚約した女が自殺した。彼女の遺書の中で、おれはDV男になっていた。彼女は精神を病んでいたのだ。警察の取り調べは三日三晩続き、葬式に出られなかったのでせめて線香をあげに行った。玄関で親父さんにしこたま殴られて、彼女の家に入ることは許されなかった。そんなことよりも、お袋さんに泣かれたことの方が余程堪えた。おれたちの過ごしてきた日々が、木っ端微塵に破壊されたような気がしたのだ。

釈然としない気持ちを抱えたまま、行きずりで女を引っ掛けたら、えらく当たりが出た。その女は彼女と比べても数段上の美人だったし、何よりお喋りじゃなかった。おれたちは戯れるようにキスをして、その後セックスをした。その行為はなんの意味も持たず、ただそこにあるだけだった。
ラブホの安いレースカーテンから差し込む日差しに目を覚ました。中身の抜かれた財布と、これまた空っぽの心がそこには残った。
シーツにくるまりながら、おれは幻覚をみた。彼女の病気が感染ったのかもしれない。けれどそれは。幸せな夢だった。彼女の顔をした神様は、一言、「嘘つき」とそう言った。
シーツには血と嘔吐痕が染み付いて異臭を放っている。おれではないから、きっと、あの女のものだ。

彼女を幸せにしてやりたいと思っていた。彼女を幸せにすることで、不幸になることが、おれにとっての何よりの幸せなのだと、信じていた。

7/27/2023, 4:22:43 PM