じん

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ところにより雨


雨が物やアスファルトに当たる音が辺りに響く。
強い雨が降り注いでいるも、傘を手に持ちながら差さない俺を見た奴等が、不思議そうに俺を一瞥して通り過ぎる。
今はそんな奴等を相手にする余裕もなく、俺はとある場所をひたすらに目指してゆっくりと歩みを進めた。
なんで俺はそこに向かうのだろう。そこに向かったところで誰もいるわけじゃないのに。
いたとして、どうしたらいいのかも分からないのに。

「……傑」

目指していた場所に着くも、そこには誰もいない。いるわけがない。
それでも相手の名前を呼ばずにはいられなかった。顔を伝う温いそれもすぐに冷たくなり、 声は雨によって消されていった。

3/24/2024, 11:28:52 AM