「ジャングルジム」
小学校の頃、よく好きな人と登ったジャングルジム。
「まだあったんだ……」 ふとそんな言葉を口ずさんだ。
久しぶりに登ってみようと思い、硬く 冷たい 鉄の棒に手を置き足をかけた。
あの頃は、高い所まで登れなかった。だからいつも好きな人が、手を差し出してくれてた。
“バカだな!俺がいなかったらどうやって登るんだよ!”いつも彼が言っていた……
でも今は、1人で登れる……
頂上に座った。ズボンの上からでもわかる、鉄の棒の冷たさ。(ビュービュー🍃🌀🍃)
風が体を撫でる。
私は、好きな人といつも見ていた景色を今は一人で見ている。「元気かなぁ……」
馬鹿だ!! なんで、なんで……
好きな人のことを考えてしまうの…… 諦めたはず……
(ポロポロ)自然と涙が溢れ出る。
「ウッ ウッ……」必死に声を押し殺してる。でも、なかなか涙が止まらない。
こぼれ落ちる涙が、風に吹かれ横に流れる……
誰もいない場所にポツンとある、ジャングルジム。
私の思い出の場所。 思い出の場所なのに、辛く 悲しい。 今ここで誓った。「もうここには来ない……」
口に出し、ジャングルジムを降りようとした。
その時、「ばーか」。 聞き覚えのある声に私は、降りるのをやめ振り返った。そこには“好きな人”がいた。
「何やってんだ。お前もうここに来ないのか……」
そう聞く彼。彼の質問を後ろに私はジャングルジムを降りた。 地面に足がつき振り返る。「うん……」
彼は私の“うん”と同時に、泣いていたことに気づいた。 「なんで泣いてる……」そう聞く彼。
私は「なんでもない」 ただ一言しか出なかった……
「そうか……」彼から出た言葉。
私は、もう来ないと決めたから、家に帰ろうとした。
「じゃぁね。私、ここにはもう来ないから……。 バイバイ」 「あぁ そうか 元気でな。 バイバイ」
私と彼の会話はここで終わった。
初めて、彼の悲しそうな顔を見た気がした。
冷たい風が、彼の心の中のような気がした。
私と彼の物語はここで終わった。
「バイバイ」 最後の言葉。
また、新しい人生を歩き始める……
“私” “彼” もう二度と会うことの出来ない。
だからこそ、彼がいた時間よりも、楽しい思い出を作る…… END
9/23/2022, 10:34:22 AM