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「忘れ物です」

 静かに差し出されたそれはきみが誕生日プレゼントにくれたライター。俺が昨日きみの部屋に忘れた物。

「ああ、すまない。ありがとう」

 受け取って、確かめるように蓋を開けるとキンと高い金属音が響く。いい音だ。懐に仕舞ってきみを見ると、きみは少し不貞腐れたような顔をしている。

「……大切なものなら、忘れないでください」

「悪かった。わざわざ届けてくれて嬉しいよ」

 ――お陰で今日もきみに会えた。
 きみだけに聞こえるように距離を縮めてそっと囁くと、きみは顔を赤くして足早に去っていく。
 その背中を見送りながら、俺はきみと会う次の約束を考えていた。

【君に会いたくて】
わざと忘れたんだって言ったらきみは怒るかな

1/19/2023, 4:37:51 PM