狼星

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テーマ:裏返し #282

裏返しに脱いである
息子の靴下をひっくり返し、
たたむのが私の日課だった。
それももう、
今日でお別れかと思うと寂しくなる。

もちろん面倒だと感じるときもあった。
「ちゃんと裏返しにしないで脱いでよ」
そんなことで言い合いになったこともあったっけ。

珍しく息子が進んで洗濯物をたたんでくれて
「いつも大変だね。ごめん」
そう言ってくれた。
でも私はそれに首を振った。
これは私にとって
息子の成長を感じさせてくれることもあったから。
小さくなった靴下に穴が空いていると
大きくなったんだなぁと感じ、
ヨレヨレになった靴下が洗濯されているのを見ると
新しいの使えばいいのに。
お気に入りなのかしら。
そう思ってクスリと笑わせてくれる事もあった。

息子は明日から一人暮らしが始まる。
家の中が寂しくなる。
でもこれも息子のため。
私も成長しなければいけないんだ。
私が立ち上がった時、
視線を下に向けた息子があっと声を上げた。
ふと目を私の足元に向ける。
私の靴下の親指には大きな穴が空いていた。

8/22/2023, 12:34:38 PM