いつまでも捨てられないもの
「あ...まだ捨ててなかったんだ」
合唱部の、活動案内のチラシ。
2年前、先輩からもらったA5サイズのそれは、クリアファイルに入れられて引き出しの下の方に丁寧に仕舞われていた。
ファイルから出して眺めると、一緒に封印したはずの苦みが心に重くのしかかる。
もう1年経つというのに、未練がましさには自分でも呆れてしまう。
先輩の恋愛対象は女の子じゃないから、どうしようもないというのに。
言ってしまえば紙切れ一枚。何度も捨ててしまおうかと思った。
でもその度に、記憶の中の眩しい笑顔に捨てる意思が揺るがされてしまうのだった。
『入学おめでとう。このあとミニコンサートするの。よかったら見に来てね』
『合唱部入ってくれるの?嬉しい!これからよろしくね』
今日も例に漏れず、2年前の春を思い出す。
苦い思い出だけじゃない。
たとえ片想いでも、失恋でも、いい初恋だったと思う。
一緒に過ごした時間は幸せだった。
僕はチラシをファイルに入れ、元の場所に戻した。
いつかこの恋が過去のものになったとき、捨てるか捨てないか、決められたらいいと思う。
8/17/2024, 1:24:14 PM