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【目が覚めると】

あなたの顔がピクセル化されモザイクになって弾けて消えた
今日の夢は最低だった
別れの追体験は
何度繰り返しても慣れるということはなく
わたし心を闇に蝕む
記憶にない経験
見たことのない知っている景色
あれは誰の目でみた世界なのか
誰の脳が処理した情報なのだろうか
わたしの心に刻み込まれて消えない刺は
また悪夢となって繰り返す
いつもなら望まない目覚め
今日だけは朝の光に救われた





【目が覚めると】

ずっと夢を見ていた
光の射さない深海で奇妙な魚と戯れ
月の裏側でウサギたちと餅をつく
月の顔に刺さったロケット
そこからでてきた
天文学者たちとおしゃべりをして
今は滅んだ地球の思い出に浸っていた
ウサギがついた餅を食べながらずっと

そして朝が来る
地球はかろうじて滅んでいない
眠い目を擦り伸びをする
珈琲の香り
目玉焼きのじゅうじゅうという音
テレビの天気予報に気をとられた僕は
気がつかない
かすかに透明な深海の魚が
目の前を横切ったことに
月のウサギや小さな天文学者が
マグの影に隠れたことに

カーテンをあける
まぶしい光が部屋を満たす
完全に消えてしまった
明け方の夢の残滓

7/10/2024, 10:47:22 AM