『I Love…』
「危ないから、火遊びはしちゃ駄目よ」
子供の頃ママに厳しく注意され
素直に従っていたボク
好奇心が押さえきれず
こっそりポケットにマッチ箱を隠した
ママに隠れて
マッチ売りの少女のように
マッチを1本擦ってみる
あっという間に消えた火を眺めて
なぜだか心がザワザワした
ママに見つかり取りあげられたマッチ箱
ボクの心にザワザワだけが残った…
あれから数年がたち
ボクは少し大人になった
相変わらず胸の真ん中あたりが
ザワザワして
ついでに黒くドロドロしたのまで加わって
ボクは時々 夜の闇に紛れて街に出る
繁華街で人混みに紛れれば
誰もボクを気にする人はいない
ビルの隙間 飲食店などのゴミ箱を見つけると、ボクの心は高揚する
コートのポケットに隠したマッチ箱
マッチを1本擦ってゴミ箱へ
燃え盛る炎を遠くで眺めて
満足感に浸る…
警察に連れて行かれようとするボクに
ママは金切り声で何か叫んでる
ボクがずっと見たかったのは
半狂乱で絶叫する見たことない
あなたのおぞましい姿じゃなく
「I Love You」
そう言って頬にキスし
優しい笑顔を見せてくれる
ママの姿だったのに…
結局 一度も見られなかった
やっぱりボクは…
ママにとっては
失敗作だったの?
1/29/2023, 11:01:57 AM