August.

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〈永遠に〉

「死ぬまで愛してね」って言っていたよね。
なのに、俺に近づくなと酒瓶片手に言うんだ。
朝になったら決まって泣きながら謝ってくる。
「お願いだから見捨てないで。こんなこと二度としないから」

最初は勿論、彼女は何かの病気ではないかと思っていたし、献身的に支えていた。
「大丈夫だよ、見捨てないよ」
ただ、俺も人間だ。彼女が泣きながら謝る姿に飽き飽きしてきて、滑稽だなと思うまでに至った。
でも、何度も同じことを繰り返しているうちに気づいてしまった。

滑稽だなと思うのであれば、それほど飽き飽きしているのであればなぜ彼女から、俺は離れようとしないのだ?
呆れてるのだろう?滑稽だなと馬鹿にしているじゃないか?
俺は、心の中で自分を必要とする人間がいることに胡座をかいて、彼女の謝る姿を酒のツマミにしていた。
今まで彼女の方が俺に依存していると思っていた。自分の友達に彼女のことを相談しても、友達は口を揃えて同じことを言っていたし、彼女自身も俺の許しを得た時に「優君に依存しちゃってるかも」と赤い目で茶目っ気で笑っていた。
だが、実際は俺の方が依存していた。
そう気づいた時は全てが遅かった。
俺は彼女を見くびっていた。彼女の手の中で胡座をかき、優越感に浸っていた俺を、彼女は知っていたのだ。

今日は3月14日。俺たちの付き合いが始まった日だ。
永遠に離れられないようにと彼女から渡されたのは、アイビーが連なったブレスレットだった。

「私も同じの買ったの!優君とお揃い!」

俺の目の前で笑う彼女は天使の顔をした悪魔だったのかもしれない。
アイビーの花言葉は、死んでも離さない。

11/1/2024, 10:39:36 AM