俺はお前が出かける前に呼びかける。
「気を付けろよ」
お前は元気に返事をする。
「もちろんですよ!」
いつもの会話。お前は初めて出来た後輩と酒を飲みに行く。
これが最後の会話になるとも知らずに。
沢山の光り輝く高い建物にに囲まれた、とても暗い一つの狭い路地裏。誰にも気付かれない場所として俺達がよく使っていた所。
2人分の煙草の煙。狭い路地裏じゃ視界が一瞬で真っ白になる。しかし今はずっと真っ暗。少し見える白は音もなくすぐに消えてしまう。
あいつの声はもう聞けないのに。
あいつの姿はもうないのに。
あいつの暖かさすらもなくなってしまっているのに。
1年に1回、あいつの仕事が成功した日はこの決まった路地裏で煙草を吸う。ずっと忘れない様に。
「そろそろまた大きな戦争なんだ。」
独り言の様に呟き、煙を吐く。
何故だかこの日は暖かい風がゆっくりと流れているように感じた。
11/8/2022, 1:07:08 PM