『スリル』 ♡10
ゆっくりと手を伸ばし、呻き声をあげる。
すると、叫び声が辺りを包み、バタバタと足音が遠ざかっていく。
しばらくすると、再び人が来る気配がした。
私は息を殺し、じっくりとその時を待つ。
今だ!
ボサボサの髪を振り乱し、血まみれの包帯に包まれた顔で声をかける。
短く叫んだその人は、腰を抜かしながらも必死で逃げていった。
あぁ、この瞬間がたまらなくいい。
恐怖に怯えて顔を歪ませ、一目散に逃げる背中を見るこの瞬間が。
この快楽に目覚めてもう五年。
来る日も来る日も前を通る人々を怯えさせてきたが、快楽が薄れることはない。
さぁ、次の獲物が来たようだ。
本日も我がテーマパークの名物お化け屋敷は
大盛況です。
11/12/2023, 2:02:45 PM