雨音

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時の記憶を遡る

あなたは、穏やかなところがありながらも
躾には、厳しく時には、怖く感じる事も
あった…

曾祖母に厳しく育てられたあなたは、
戦争の大変さも知っていた

多くは、話さなかったが時々、ポツリと
溢す言葉の端々に当時の悲惨さを
感じる事が出来た

今は、食べる物に苦労がない
疎開する事もない
親と離れる事もない
大切な人が戦争で亡くなる事もない

そう言っていたあなた
自分に厳しく人には、優しく
時に、私には、親であり
時に、私には、親友のようであり
時に、私の最大の理解者であったあなた

存在に救われたのは、言うまでもない

そんなあなたは、病気になっても痛いとも言わなかった
心配をかけず大丈夫だと言うばかり

最後の時、きっと本人は自分の体がもう長くないと
悟ったのかも知れない

私、帰れないのかな?


気休めの言葉、きっと帰れる大丈夫、大丈夫

そんなありきたりの言葉だけで精一杯で
ごめんなさい
本当の事は、言えなかった

あなたが、最後にみたいと言ったのは
病院の側にある桜並木と菜の花
凄く綺麗で 凄く寂しかった

花びらが舞う度にあなたの命も舞い上がって行くようで

あなたが居なくなったあの時に見た桜とは、
違うが今年もまた、この季節が巡ってきた

きっとあなたも、この景色を見ているのだろう
桜散るこの景色を


あなたの心が春のように穏やかな気持ちでありますように…




4/17/2023, 10:34:36 AM