くじら

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家から放り出された夜に見る月がすきだった

冷えた裸足でぺたぺたと歩き、いつもは出来ない散歩をするのがすきだった

今ごろ、母は見知らぬ男の人と遊び、父も他の女の人と一緒にいるだろう

そんな時、現れたあなたは、まさに私の天使だった

「こんな時間にどうしたんだい、坊や?」

少し露出度の高い服に、クルクルと巻かれた髪
でも、声は見た目からは想像出来ないほど優しくて、あの白い手で暖かいココアを渡してくれた

「夜はいいよ、私が私でいられて」

お姉さんは、夜のお店で働く人だった
昼の世界に怖くなって、夜の裏の街に逃げてきたらしい

「お姉さんは、私でいられない時があるの?」

そう聞いた時、一瞬目を見開き、月夜に照らされ風になびく髪を抑えて言った

「そうだね、時々。」

それだけ言って、ココアを一気飲みした

「そっか、私も、この夜だけが、私でいられる時」

似た者同士だね、とお姉さんに笑いかけた

月明かりが、私たちを地獄から逃がしていくれる

月明かりは、私たちの天使だ


お題『月明かり』2025 4 20

4/20/2025, 11:12:51 AM