怖がり
私は今まで一度も、恐怖を感じたことがありません。
虫も、幽霊も、人の目も。
いずれ死ぬことにすら、恐怖を感じません。
高い場所に居ても、恐怖を感じません。
暗闇の中でも、恐怖を感じません。
他人に怒鳴られても、恐怖を感じません。
明るい未来が見えなくなっても、恐怖を感じません。
恐怖を感じないことに対しても、恐怖を感じません。
自分自身や他人にそうやって言い続け、
「何も怖くない自分」を演出する。
私はいつだって、震える心を棚の奥にしまいこみます。
「恐怖」はネガティブな感情の一種です。
人間から、立ち上がる勇気を奪ってしまいます。
徹底的に、排除するべきです。
「恐怖」という感情は、人間にとってのバグのようなものです。
何にも動じない、完璧な自分であるべきです。
完璧な人間にしか、この世に居場所は無いのです。
恐怖を感じませんと言っておきながら、誰よりも恐怖について考えている。
「恐怖」をよくないものであると認識している。
私は、「恐怖」に対して恐怖を感じています。
虫や暗闇を怖がる人たちよりもずっと、
「恐怖」を意識し恐れています。
「怖がり」なのは、私自身だったのです。
私はその事実が、怖くてたまらない。
自分が「怖がり」であることが、虚しくてたまらない。
3/16/2026, 12:13:55 PM