狼星

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テーマ:好きな本 #214

あるところに何でも覚えている魔女がいました。
どんな生き物の名前も難しい国の首都も。
特に本で吸収した知識は膨大なもので、
人間何百人ぶんの知識を記憶していました。
そんな魔女は、
人間の少女に突然
「たくさんの本を読んでいるけど、あなたの好きな本は何?」
そう聞かれたのです。
魔女は記憶の中から少女に答えます。
しかし、魔女の中で何かが引っかかった。
それは魔女にとって初めてのことでした。
記憶力のいい魔女なのに、
本当の好きな本の題名を思い出せないのです。
魔女は何も気にしていない素振りで少女を見送ります。
しかし心のなかには突っかかりが取れず、
もやもやしている。
こんな感情、私は知らない。
魔女はこの日から本の虫になったかのように、
図書館で探しました。
その本を。
しかし図書館にある本は
記憶にある本の題名、内容ばかり。
これじゃない。
あれでもない。
魔女は今日も探している。
彼女が探している本が実際に存在しておらず、
彼女の母が即興で作った
作り話だと思い出すこともなく。




♡2800ありがとうございます(^^)

6/15/2023, 1:32:38 PM