絢辻 夕陽

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目を覚ますとそこは不思議な家の中だった。
まず暖炉が自分の大きさに対してやたら大きい。その割に机や椅子やお皿などは自分より小さい。
ここは一体誰が住んでいるのだろうか。
上を見上げると二階の窓がぽつんと一箇所だけ開いている。
上からなんかがたごとと大きな音がする。
誰だろう。
階段が暖炉横にあったので登ってみるとそこには帽子を被った黒猫がいた。
にゃあ。
猫はそうなくと、がたごとと音が鳴っている方向へと案内してくれた。
一体何なんだここは。
そう思いながら猫の後をついていくと自分より少し背の低い女の子がいた。
その子は棚をがさごそと何かを探し回っていた。
この音だったのか。
その女の子は自分に気づくと挨拶した。
彼女は魔女見習らしく、猫はその子の師匠だという。師匠?
そして猫の方を向くとすらっとした女性が立っていた。
「まだ見つからないのかしら。あの本、結構資料として貴重なのよ。」
「はあい。ちゃんと探してますって。師匠。」
そう文句垂れると女の子はまたがたごとと探し始めた。
どうやら自分は森の中で迷い込んだ際に魔女と呼ばれる女性に助けられたらしい。
「あのさ、なんであの森であんな所いたの?」
そうだった。
その理由を思い出そうにも思い出せない。
仕方なく事情を話し魔女と思われる女性は私を数日泊めてくれる事にしてくれた。
彼女はもう何百年もの間ここに住んで植物の研究に勤しんでいるという。女の子は数年前ふらっと家に来た事をきっかけに弟子にしたという。やむを得ない事情とはいえ助かった。そういえば自分も何か大事な植物を探しに来てたような。
何がともあれ助かったことには違いない。
彼女はお茶を出し昨今の街の状況を聞いてきた。自分は昨今の街はどうも騒々しい。何も起きなければいいが、と話した。
上からずだーんとすごい音がした。
慌てて二人で見にいくとやっと探し物の本が見つかったらしい。
その代わり部屋が大惨事だが。
「やっと見つかったのね。これ凄く大事なものなんだから。」
そう言うと師匠はひょいとその本を片手に持って降りていった。かなり重そうなのに片手で持つとは。
そして女の子はというとこまっしゃくれた感じで。てへへと笑っていた。
暫くはこの家に世話になる。
まぁ何が起きるかはわからないが、面白くはなりそうだ。

「魔女の棲む家」

7/10/2024, 12:23:08 PM