藍瀬 夕

Open App

お題:遠い日の記憶

春の季節
初めての感情だった。
こんなにも…傍に居ないといけない思ったのは…
君のことを考えると胸のあたりがぞくぞくして
苦しかった。まだ君を置いていけない…僕が傍にいなくちゃ…

長い月日が経って
私は何もかも失ったような顔で
大きな桜の木の下でぼーっとしていた。
すると、一片の桜の花びらが私を惹き付けた。
花びらを辿っていくと…そこは…
…昔突如現れた男の子との二人だけの秘密基地だった…

私は昔、両親に捨てられ本当の「愛」を知らないまま
今を生きてきた。
「こんなつまらない世界生きててもなんの意味もない」
私はそう呟いた。
そこには最悪にも同年代くらいの男の子がいた
(絶対聞かれた)
「…君が胸を張って生きていけるように僕が
側にいてあげる」
そう男の子は言った。
最初はなんだこいつと思っていたけれど段々とその男の子に
引力めいた何かを感じた。…私は目が離せなかった…
言われるがまま男の子について行ったら人気(ひとけ)のない
ところに連れてかれそこには、アニメでしか見た事のないくらいの不思議な家があった。
「今日から此処を二人だけの秘密基地にしよう」
そう男の子は言った
混乱した。急に現れた男の子から二人だけの秘密基地なんて
言われても何が何だか分からなかった。
でも、また引力めいた何かを感じた。私は「わかった」と
返事をした。
そこから二人の間には解けない絆が生まれた。
私はある疑問があった。《男の子は絶対に街の方に行こうとしない》ある日私が街に行こうと誘ったら頑なに拒否してきた。
他の日だってそう良くしてもらってるおばあさんを連れてこようとしたら泣きながらやだと言ってきた。男の子には秘密がある。

その時私は知らなかった男の子が本当は…
…私にしか見えないという事を…

〜8年前春のニュース〜
…次のニュースです。15歳の男の子が街から離れた人気のないところで倒れていることがたまたま通りかかった住民が通報をし、
搬送先の病院で死亡したことが分かりました。その男の子の手には一片の桜の花びらを握りしめていたという情報も入ってきました。……


私は大切な事を忘れていた。
あの時男の子が急に居なくなった日
私は当然意識を失った。
目を覚ましたらそこは病室だった
隣のテーブルに置かれていた
一片の桜の花びらに目を向けた
私は男の子との思い出を、記憶を完全に忘れてしまっていた。

私は今二十歳。周りの人に恵まれながら
生きている。
また春の季節がやってきた
毎年この季節になると思い出す
私を変えてくれたあの男の子のことを

絶対に忘れてはいけないあの春の記憶…
私は
『私をこのつまらない世界から救い出してくれた
あの男の子のことを絶対に忘れない』



7/17/2023, 1:55:58 PM