本川麗花

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【日差し】

 窓辺から差し込む、夏の日差し。
 ジリジリと照らす太陽は、室内の気温を上昇させていく。その部屋では、少年が夏休みの宿題を終わらせる為に、勉強机に向かっていた。

「暑い……」
 
 少年の部屋のエアコンは故障していて、現在使えなかった。扇風機の風だけで暑さをしのぐには、今日の気温は暑すぎる。
 宿題を始めてから一時間が経過していたが、暑さのせいで少年の集中力は低下していた。

「こんなことになるなら母さんが出掛ける時、ついでに図書館まで送っていってもらうんだった……あ゛ぁ、暑い……」

 少年の母は仕事の為、午前九時頃に家を出ていた。通勤途中に図書館がある為、ついでに車で送ってもらう事がよくあった。
 今回は外出するのが面倒だと感じて、朝の時点での判断を間違えたと後悔している。

「アイス、食べよ……」

 少年はフラフラと椅子から立ち上がり、アイスを求めキッチンへ向かう。
 やっとの思いでたどり着いた少年は、最後の力と言わんばかりの必死さで冷蔵庫を開けた。

 ガラッ

「ウソ、だろ……」

 残念な事に、冷凍庫の中にはアイスのストックがなかった。あるのは、おかず系の冷凍食品と氷のみ。
 少年の求めていたアイスは、一つもなかった。
 そういえばと、少年は昨夜の記憶を思い出す。

『あ、アイスみっけ!食べちゃお!』
『こら!アイス、今あるのそれで最後なのよ!』
『いーじゃん!今あるもの食べなくて、いつ食べるのさ!』
『全く……仕事帰りに買ってくるけど、明日のお昼はアイスないからね。』
『大丈夫!大丈夫!』

 全然大丈夫じゃなかったと、少年は項垂れた。あの時の自分は何やってるんだと、後悔しても遅い。アイスは少年が、昨夜食べてなくなってしまっていたのだから。
 それから少年は自室に戻り、扇風機の目の前にあぐらをかいて座った。扇風機の風力を最大にして、風に当たり続ける。
 
「暑い……」

 アイスを買って帰宅する予定の母は、まだ数時間は帰ってこない。
 遠くの方に入道雲がある以外に、雲がない真夏日。
 少年は、水分補給をしながら扇風機に当たり続けていた。

7/2/2024, 1:18:40 PM