絢辻 夕陽

Open App

街は今日も賑やかである。

若者は派手なファッションを着こなし、
くたびれ疲れた様な表情を浮かべるサラリーマンらしき人やあどけない表情を浮かべ母親らしき人物と一緒に買い物に行く子どもの姿がそこにはあった。

此処はあらゆる人々を受け入れる「街」

あらゆる世代の人間を受け入れ時には癒し、
そして時には諍いを起こす。
それが街。
今日もあらゆる人々の人生が生き通い、交叉し、
そして通り過ぎていく。

「ねぇ、聞いてよ〜。昨日さぁ•••」
「ていうか、それ本当?」

あらゆる言葉が街を覆いそして広がり続ける。

「お母さん、今日は公園に行かないの?」
「今日はお友達が来る約束だったでしょ。」
「はぁーい。」
子どもは友達と約束をしていたらしく不満気に母親に答えていた。

「はいっ、はいっ、わかりました。では今からそちらに伺いますので、はいっ」
若いサラリーマンらしき男性は携帯電話の先で取引先と連絡を取りどうやらこれから向かう様だ。

「ワンっワンっワンっ」
「あぁ〜、待ってよペロちゃーん、置いてかないで〜」
ペロちゃんと呼ばれた小型犬は飼い主らしき若い女性を引っ張って何処かへ向かっている様だった。

「ねぇ、明日のテストちゃんと勉強した?」
「全然っ、もはや完全に諦めてる。」
塾帰りの小学生らしき二人組はそう言って公園の前を通り過ぎていった。

「おや、こんにちは。今日もいい天気ですね。今日も公園の花を植えに来られたのですか?」
「えぇ、こうしているとなんだか元気が出てくるので。」
公園のボランティアとして活動している人々は会話に花を咲かせていた。

「君、いつも此処にいるけど何か悩みでもあるの?」
警察のお兄さんは小学生らしき少年に声をかけていた。
「•••」
少年は何も答えない。答えたくなかったのだろう。
恐らく家庭で居場所を見出すことができなくて此処に来たのだろう。
「ならさ、答えなくてもいいよ。いつでも話し相手になってあげるからね。」
そういうと警察のお兄さんはニコリと笑顔を見せ、
その場を立ち去った。
それでも少年はそこから一歩も動こうとしなかった。

ある男性は空を仰ぎ見て、こう呟いた。
「この街はあらゆる人々を飲み込み続け、そしてあらゆる人間達を受け入れ続ける。
それがこの街だ。」

此処は「街」。
あらゆる人間を受け入れ続ける街。
街は決して眠りはしない。

「街は眠らない」

6/11/2024, 10:57:46 AM