カーテン
天井から床まで覆う重厚なカーテン。落ち着いた色合いの布地に触れ、ほんの少し開けて視線を落とす。眼下、高速道路を流れるライトの列。ぼんやり眺めていると「何見てんの」背後から声が飛ぶ。振り返ればバスローブ姿の彼が背後に立ち、先刻の私と同じように窓の外へ視線を向けた。
「Rの33」
「カエルの散歩?」
「ちがうー、えっと……BCNR33」
「ああ、33」
「さっき積載車通ったの。タイヤ山盛りだったからドリ車かも。あした走行会かな」
「そういうことばっかり詳しくなって……」
「教えた張本人がそゆこと言う?」
「え、俺のせい?」
「おかげさまです」
腕を回され身体が密着。背中にじんわり伝わる彼の体温、感触。会えないあいだ、私がずっとほしかったもの。
「なんか、あっつい。熱ある? ねむたいの?」
「シャワー浴びたからだろ。むしろ寝かさないけど。……何笑ってんの」
「いつもすやすや寝ちゃうのにねえ」
「色々吸い取られてるからな」
「わたしのせいかあ」
首を傾げると同時、うなじに唇が触れる。軽い挨拶とは程遠い、明確な劣情を剥き出しにした性行為そのもの。
「まだ我慢させる気?」
耳元の囁きは誘い。俯く私の反応を愉しむように両眼で舐る。それすら私にとっては愛撫。振り向くと視線が交錯し、彼の手でカーテンが閉じられた。
(了)
2023.10.12 藍 お題「カーテン」
10/12/2023, 12:57:23 PM