ぶぅぶぅ

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 高いビルとビルの隙間から、三日月がのぞいている。ふう子は眉間にシワを寄せて三日月をしばらく見つめていたが、諦めて視線をそらした。
「ダメだわ」
 不機嫌そうにふう子がぼやいた。
「どうしたの?」
 ふう子の隣にいた、みくもは首をかしげた。するとふう子は口を尖らせて答えた。
「視力が落ちたのよ。だからか三日月が三つも折り重なってぼやけて見えるの。前はこんなことなかったのに」
 みくもはくすっと笑った。
「良いじゃない。私なんてメガネとったら三日月がどこにあるのかすら、わかんなくなっちゃうよ」

1/9/2024, 2:15:50 PM