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冬晴れ
「さむーい」
「先に行くなよ」
ダウンジャケットを着た竜胆、ノーカラーコートの蘭、凝ったデザインのロングコートを着たりな。外の空気は澄んで空の青も淡く、薄氷が張ったような済んだ冬だった。太陽の光は夏よりもずっと優しく、かすかに見つめるだけならば許されるくらいの柔らかさをしている。穏やかなその空気に似合わず気温は低く、りなはしっかりと眉をひそめた。その美しい昼下がりには似合わない。
「え? さむい、いつも家にいるから冬を舐めていました」
「帰る?」
「帰らない」
「オレのマフラー使う?」
「外したら死ぬよ?」
「死なねーよ」
 竜胆が雑に外したマフラーをぐるぐると巻かれて、きゃあと子供のように声をあげる。「竜胆の体温残ってるあったかい」「……そーかよ」嬉しそうにマフラーに顔を埋めるりなを照れくさそうに見つめる竜胆、そしてそのふたりをなごやかに眺める蘭。冬の日照は短いが、その空間はどこか永遠を感じさせた。


1/6/2023, 5:15:02 AM