最後まで伸ばしてくれていた手をとらなかったのは自分だ
引き留めようとする手を振り払って
それでも追いかけてきてくれて
イラついた俺は傷つけ
『一生、会いたくもない』とも言い放った
彼の絶望に歪んだ顔はイマでも思い出せる
あのとき全身に走った愉悦は完全に悪魔に支配されてしまった証拠だった
それでも、何度も何度も必死に立ち上がる姿に嫉妬を覚え、さらなる怒りが生まれた
そうやって繰り返してきた闘いも些細なことであっさりと終わりを迎えてしまった
頭の中で物凄く嘲笑っている悪魔の声に目の前が真っ黒に染った
未熟でバカだったのだ
気がつくのが遅すぎた
目を醒ましたところでもう手遅れだった
いっときの気の迷いで手を出したモノの代償は余りに大きかったのだ
すべてを闇に侵食された身体は限界を迎え朽ち果てようとしていた
最期はふたりの出逢いの地で
君と笑いあっていた頃を思い出して静かに目を閉じるよ
壮大な花咲く丘の上
自業自得とはいえ空いた隣が寂しかった
走馬灯……
いや、俺がそんなものをみられるはずがない
幻覚だろうか
流れないはずの涙がこぼれ落ちていた
あの時はごめんね
自分はどうかしていたみたいだ
今までありがとう
そして、さようなら
『ありがとう、ごめんね』2023,12,08
12/8/2023, 12:19:20 PM