海の底
20歳のとき、自身を俯瞰して見えていた景色は「海の底」だった。
例えるなら、海深く沈んだ漆黒の海底の沼の中から、ぼんやりとかすかに太陽がさしこむ海面を見上げている感覚だった。
暗闇に囚われる私。
目に見えない「なにか」にとらわれ、自分が何者であるか定まらない孤独な景色。人には理解してもらえない景色。
それから時はたち、おぼろげながら自分らしさを追い求めたら、いつのまにか海底から浮上し海面にでてこれいた。
でも、そこは太平洋のど真ん中だった。
見渡す限り地平線のど真ん中。
結局はまだ、さまよっている。
ただ、いつか定住できる場所が見つかるといいなと思う期待感と、さまよう中での不安定さを楽しんでる今を思うと、M気質なんだとも感じる。
時はさまざまな気持ちをつつみこんでくれる。
私はそっと人差し指を口にあてて、
「静かにね」のポーズをとり君に語りかける。
「この話は私と君との秘密だよ。」
「シー(sea)」
そういって私は携帯を閉じた。
1/20/2023, 11:17:50 AM