『この道の先に』
「なぁ、心理テストしようぜ」
美術の授業中、机を汚さないようにと配られた新聞の一部を指しながらそいつが言った。
私はこの時間にニス塗りまで終わらせないとどう考えても補習決定だと言うのに。
「忙しいから無理」
「じゃあ答えてくれたら帰りにアイス奢る」
嫌に真面目な顔をして、アイスまで引き合いに出してくるとは、一体その心理テストで何がわかるのだろう。
「のった」
私は即答した。
「じゃあいくぞ?この道の先に、崖があります。
その崖では2人の人間が今にも落ちそうになっています。
1人はあなたの家族です。もう1人はあなたの恋人「家族」」
「え?」
なんとありきたりな心理テストだ。私は食い気味に即答した。
「家族を助ける。なぜなら私に恋人はいないから」
そいつはポカンとしてから、にまぁっと笑った。
「そっかそっか!家族か!そっか!」
「で?何がわかるの?」
「友達が多いが少ないか!家族を答えるやつはクラスで浮いてるボッチちゃんだってよ!どんまいどんまい!」
急にテンションを上げ、人をディスりまくってきた。それが嘘であることは聞かずともわかったが、私はアイスがもらえるのであればもうあとはどうでもよかった。
「そっかそっか!恋人もいないか!可哀想にな!!」
私はこいつとそれほど仲が良かっただろうか。記憶が正しければ今さっき「なぁ、心理テストしようぜ」と声をかけてきたのが初絡みだったと思うのだけど。
7/4/2024, 1:46:30 AM