月園キサ

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#柚原くんの一目惚れ (BL)

Side:Luki Ichinose



「ねぇねぇっ、市ノ瀬くんって好きな人いるの…!?」

「ん〜…今んとこはいないかな〜。うん」

「そうなんだ…!…じゃ、じゃあ…私とか、どう…?えへへ」

「…あ〜…そういう感じ?」


ぶっちゃけ、俺は人生でこのパターンの会話をあと何回繰り返さなきゃいけないわけ?と、正直思っている。

ここで適当に好きな人がいるとか答えてしまったら、噂に尾びれがつきまくって後々めんどくさいことになる。

逆にいないと言ったら、明らかに狙ってきた感じの子に流れで告られるか、告る子の代わりに聞きに来たパターンで俺が彼女いないとバラされるかのどちらか。


…どっちを選んでもめんどくさ…。


「よぉ市ノ瀬!一緒行こうぜ〜!」

「ゆーずーはーらーーーっ!!今いいとこだったのに邪魔しないでよっ!」

「わりぃわりぃ!俺どうしても今こいつに用あってさ〜!」


…あ。ちょうどいいタイミングで回避チャンスきたな。
柚原が「話を合わせろ」と言わんばかりに目で合図を送ってきたから、俺はそのまま乗っかることにした。


「…柚原ぁ、俺を待たせすぎ〜」

「も〜悪かったって!今日はたまたまちょっと寝坊したんだよ!」

「ってなわけでごめん。先約いたの忘れてたからまた後で〜」

「え、ちょ、市ノ瀬くん!?」


柚原と肩を組んでしばらく歩いた後、廊下の突き当たりまで来たあたりで突然柚原が吹き出した。


「っははは!よっしゃ、市ノ瀬救出作戦大成功!」

「…は?何〜?柚原、俺が告られてるとこずっと見てたわけ?」

「見てた!んでも何か、お前答えるのめんどくさそーにしてるなって思ったからこれは俺が助けてやんねーとって思って」

「へぇ?可愛いおチビちゃんのくせにやるじゃん」

「俺の身長は関係ねーだろぉ!!?あと可愛いを免罪符にすんなっ!!」


正直、あのタイミングで柚原が来なかったら詰んでいたかもしれない。
まさかこのちっこい救世主が即席の芝居をしてまで俺をわざわざ助けてくれるなんて、本当にこいつは…。


「…ん〜…まぁ、サンキュ」

「へっ?待て待て、市ノ瀬が俺にお礼言ったの初めてじゃね!?」

「え〜…そうだっけか」

「市ノ瀬にお礼言われた!よっしゃ!!」

「それってそんな喜ぶこと?」

「だって自分の好きなヤツの役に立てたんだぞ?嬉しいに決まってんじゃん!」


…そうだ。いつもマブダチと同じ感覚で接してくるから忘れかけてたけど、柚原も俺のこと好きなんだったわ。

俺の周りでちょこまか動き回る柚原を眺めているうちに、俺は改めてこいつの「好き」の本当の大きさを思い知らされる。


「柚原〜」

「ん?どした?」

「…付き合ってみる?俺たち」

「は!?へっ!!?…それ、マジで言ってる?」

「マジ」


基本的に他人に興味がない俺を好きになった柚原ってけっこう変わってるなと思うけど、そんな柚原を可愛がってる俺も俺だな。

だから俺はほんの少しだけ、自分の気持ちに正直になってみることにした。

柚原といる時の胸の奥のムズムズが未だに消えないのは、まだちょっとウザったいけど。




【お題:正直】


◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・柚原 愁 (ゆずはら しゅう) (受けみたいな)攻め 高1
・市ノ瀬 瑠貴 (いちのせ るき) (攻めみたいな)受け 高1

6/2/2024, 11:50:33 AM