推しが好きだ。
そりゃ、推しだと言ってんだから当たり前だろうが、彼女の笑顔を見ると1日の疲れが吹き飛ぶ。
『一生引退しないで……』
と画面を見ながら言うほどには好きだった。
通学路で流れる曲は全部推しが歌った曲。
そんな私も今は。
「────あー……どうすっかな……」
引越し作業での断捨離で推し〝だった〟グッズを
捨てるか悩んでいる。
推しは今も好きだ。
……でも、もう最優先ではなくなってしまった。
私が引っ越す場所に、持って行けるのか?と。
飾れるのか?と、大人になった私が問いかける。
「……」
ぎゅう、と手に力が入る。ああ、推しよ。
あの頃の私の生きる糧よ、光よ。どうか。
「……今見ても、まだ間に合うかな。」
二階にある部屋からどたどた、と階段を降りて
テレビの電源をつける。
────キラキラ。と光った感覚がした。
それはテレビの光でも、なんでもなく。
彼女の笑顔で、だ。
「ああーーーーやっぱり好きだ……」
消えないで、と願うくらいは、許してくれるだろうか
9/4/2022, 6:53:58 PM