子供の頃、その恐るべき敵と初対峙した。
黒光りボディ、神速、圧倒的存在感。
奴だ、Gが現れた。
姉の悲鳴が恐怖を倍増させる。
すわと急ぎ丸めた新聞紙片手に臨戦態勢に入る母。
その間涙目のまま動けずにいた私を侮るかの如く
Gはピクリとも動かない。
不動の母とGの放つ緊迫感。
横目にいつの間にか距離を取った姉の手招きが見えた。
意を決し姉のもとへ一歩踏み出したその時
まさかの事態が起きた。
私の足の着地点にGが突進してくる--
…ふみっ
Gにとっても私の動きはまさかの事態だったようだ。
その後、半狂乱で足の裏を洗う私を母と姉が褒め称えた。
あれから時を経て、Gと幾度目かの対峙。
そうそうあることではないと分かっていても
「Gの奇跡」に備え、スリッパを必ず履くことにしている。
10/3/2023, 8:07:58 AM