蓮池

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天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、

朝から彼女の機嫌が悪かった。
おはようと言ってもだんまりを決め込んで、コーヒーを用意してそっと彼女の前に置いても窓の向こうを向いたまま。
昨日は怒らせるようなことをしたっけ、と考えてみる。

靴下を丸めたまま洗濯機に放り込んだ。
食器を水につけずにシンクに入れた。
燃えるゴミを出し忘れた。
他にも色々。

思い当たることばかりで血の気が引いていく。
だらしない僕は彼女を怒らせてばかりだ。
でも、いつもなら言葉にして伝えてくれる彼女が、ここまで何も言わないなんて初めてだ。
「あ、あの!ごめ…」

とりあえずで謝ってくるのは好きじゃないから。

以前、彼女がそう言っていたのを思い出して口を閉じる。
でも黙ったままなのも耐えられない。
「き、今日はよく晴れたね!」
「…」
「散歩したら気持ち良いんだろうな〜!」
「…」
「洗濯物もよく乾きそうだよね!」
「えっと〜…」
青空を見上げたままの彼女に不安が募る。
こんな話がしたいわけじゃない。
言葉を一生懸命探してはうろたえる僕に、彼女が小さく笑った。
「ホントに仕方ないなぁ」
呆れたような顔で、でもちょっとだけ優しさを混ぜた笑顔にようやく僕も笑うことができた。
天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、

君がいないと生きていけないということ。

5/31/2023, 12:19:28 PM