狼星

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テーマ:何気ないふり #138

道で困っているお婆さんがいた。
みんなお婆さんが困ったことに気がついていた。
でも、声を掛けようとはしなかった。
気がついているけど
何気ないふりをして通り過ぎていく。
私もいつもならそうしていただろう。
今日は何故かそのお婆さんから目が離せなかった。

それはここにくる少し前、
私よりも小さい子が電車で
お年寄りに席を譲っていたのを見たからかもしれない。

他の席が空いていたのもあって、
そのお年寄りは断っていたけど、
その子の勇気を出した行動できっとあの人の心は
その子の思いやりの温かさを知ったのだろう。
本を読みながらも、
チラチラとその後のことを気にかけているようだった。


何気ないふりをするのは簡単だ。
知らないふりをして、他人事として考えるのは。
でも、それを乗り越えて
勇気を出した行動はその人だけでなく
周りの人の心までを動かすんだなと感じた。

私はお婆さんとの距離を縮める。
鼓動が早くなるのを感じる。
それでも私は距離を縮めることをやめなかった。
あの子が踏み出した一歩を私も踏み出そうとしている。
周りの目も気になったが、
それ以上にドキドキしていた。
私は勇気を出して話しかける。
「こんにちは。お困りですか?」
何気ないふりはしない。今、この一瞬だけでも。

3/30/2023, 12:29:08 PM