夏野

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【⠀子供のままで⠀】

いつか放り出されてしまうのかと思うと、怖くてたまらない気持ちになる。

今年で私は18歳になる。
成人の年齢が早まったから、今年で成人になる。つまりは、保護者が要らなくなる。
だから、今年の誕生日はものすごく来て欲しくない。
数年前ならまだ子供でいられた年齢なのに、と思ってしまう。

両親が家に帰ってこなくなったのは小学5年生くらいの頃。何故帰ってこないのか、私は未だに知らないけど。
幸運だったのは家の前で泣いていた私のことを、隣の拓也さんが見つけてくれたことだった。
寂しくなったら家に来ていい。その言葉が心の拠り所だった。

一軒家の中、一人でいると寂しくて、怖くて。
夜中に耐えきれなくて拓也さんの家に突撃したのが初めてだったと思う。それでも得体の知れない女児を受け入れてくれた拓也さんは凄い。

それから何がどうなったのか私は知らないけど、拓也さんは私の仮の保護者になった。学校の同意書はもっぱら拓也さんが書いてくれている。もう両親よりも親らしい。
自宅に帰るよりも拓也さんの家に入り込むことの方が多くなって。いつでも受け入れてくれたし、一人で寝るよりも誰かと一緒に寝た方が怖くないから。

でも、もう甘えられない。
……合鍵、返したら泣いちゃうかもな。

「美緒、なんかあったか?」

いつもの煙草の匂いのする、勝手知ったる拓也さんの家
。私は勝手にキッチンに入り込んで料理を作っていて、背後に拓也さんが現れた。

「なにもないよ」
「……何かあったら言えよ」

今更遠慮すんな、と頭をぐりぐり撫で回された。

ずうっとこの関係が続けばいいと思う。
子供のままでいたいなぁと、本気で思った。


end

※昨日の愛を叫ぶ。のお話。

5/12/2024, 3:51:30 PM