るてるて

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沈む夕日

夜道は危ないからひとりで歩いてはダメよと
口うるさいくらいにお母さんにいつも言われていた
女の子がひとりで出歩くのは世間一般的にもちろん危険なのだが
こちらでは別方向の危険の意味も含まれていた

その日は大切にしていたキーホルダーをどこかに落としてしまい
時間を忘れるほど夢中になってひとりで捜し回っていた
失くしてしまった悲しさと不安で涙が込み上げた

沈む夕日
辺りは徐々に闇夜に包まれていった

・・・?

ふと何かしらの気配を感じて後ろを振り返る

―――・・・

人らしき立ち姿が見えた
暗いのと涙で滲んで顔は見えなかったが
かなりの長身だった

―――見ぃつけたぁ・・・

低く呻くようなくぐもった声が聞こえた
何を言ったのか咄嗟には理解できなかった
ただ次の瞬間、人ならざるものの速さであっという間に詰め寄ってきた
不安が一気に恐怖となり身体が強ばる

―――ぁそぅぼう・・・

耳元ではっきりと聞こえたその声と
暗闇の中で浮かび上がった2つの赤い眼を見た瞬間に
私の意識は飛んだ

意識が戻ったのはお母さんに声を掛けられた時だった
遅くなっても帰ってこない私を心配して捜しに来てくれた
家の意外とすぐ近くの所で放心状態で立っている私を見つけたらしい

ふと右手の中に違和感を覚えた
見るとそこには失くしていたキーホルダーがあった
不思議な感じと恐怖心とが入り交じって何がなんだか分からなかった

あれはキーホルダーを届けてくれた妖精さん?
・・・あんな恐ろしい妖精さんあってたまるか

自分で自分に突っ込みを入れつつ
大切なものはもう失くさないと強く誓った

4/7/2024, 1:55:47 PM