「今日も光と音だけなんじゃない?」
にわかにかき曇り、あやしい空模様になってきた窓の外を見る私に母が言った。
隣県は連日午後になると強烈な雷雨になるのに、川を境に、こちらの町はピカッと光ってしばらくしてゴロゴロ鳴っても、雨だけが降らない。
母がそう言うので、私も油断していた。
冷房のきいた部屋で昼寝していた。
突然ザーッと大きな音を立てて大粒の雨が降り出した。階下にいた母が慌てて雨が吹き込んできた窓を閉め歩く。
「母さんそれより洗濯物!」私が叫ぶと庭に干してあった洗濯物が、雨水をそれはそれはよく吸収していた。最近買った新発売の柔軟剤が効果を発揮したようだ。「柔らかさと吸水性バツグン!」がうたい文句だったから。
私はずぶ濡れになりながら重くなった洗濯物を回収する。それを見ていた母が「もう!誰よ音だけって言ったの!」と言うので、「あなたですよ毋上。」私が苦笑して答えると、母はため息をつきながら、洗い直しのため洗濯機に向かったのだった。
お題「空模様」
8/20/2024, 4:14:38 AM