神様が舞い降りてきて、こう言った。
「先ばかり見ようとするから目が曇るのだよ。自分を守る事に囚われているから人が怖いのだよ。人が怖いから身動きが取れなくなるのだよ。
さあ、ここへ。お前にはこの陽の当たる場所が必要でしょう。
もうその檻からいい加減でなさい。そんな生き方では更に目が曇り、耳も聞こえず、声も出せず、手も足も凍りついていくだけでしょう。」
その鈴の鳴るような朗らかで笑みを含んだ声が響き終わらぬうちに、神さまの姿は跡形も無く一瞬のうちに消え、梅と白檀のほのかな香りがたちのぼっていたのであった。
7/27/2023, 11:16:57 AM