路地

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不条理である。まことしやかに囁かれてきた、それを目の当たりにした感覚である。窓の外には春霞を連れてきた青空が広がって居る。対して私の自室は真っ暗である。今頃桜が咲き始めるだろう。春特有の甘い草木の匂いが、道行く人々の顔を覆っているのだろう。私は、まだ冬の香りを放つ石油ストーブをただ見つめていた。もうすぐ、この部屋はどんな日差しよりも熱を持つことになる。金品を求め荒らされた自室の中、私の足元には、腹から血を流す私がいる。ああ、不条理である。


お題 不条理

3/18/2023, 12:27:35 PM