NoName

Open App

生きる意味なんて何にもないんだよ。

隣で彼が言った。

なんでそんなこと言うの。
そんなの寂しいじゃん。


それでも生きる意味なんてないよ。
僕も何回も考えた。
でも何もなかった。




初めて出会ってから、
彼の目はいつもどこかうわの空で、

私はその一重の下に佇む
寂しげな黒い瞳に惹かれたんだっけ。

暗闇に慣れた視界の先で、
そんな彼の寂しげな横顔が虚空を見上げていた。


しばらくしてまた彼が口を開いた。

でも、
何にも生きる意味なんてないけど、

君と一緒にいれることだけは、

生きてて良かったって、

思える、気がするんだ、

暗闇の先を見上げる彼の、
涙が頬を伝うのがみえた。


そっか、。


そして、
私は腕につけていた
赤色のヘアゴムを
彼の小指に優しく巻いてやった。







6/30/2024, 12:14:43 PM