木皿

Open App

 貴方は知っていますか?わたしがどんなに貴方を愛していたか、知らないかもしれませんね。今貴方のみている景色には私はきっといないでしょう、それは仕方ないことなのです。

貴方の記憶から私が消えたあの日に、決めたことがあります。それは貴方の幸せを願うために貴方の目の前から完全に消えることです。私は貴方にとって最低な存在でした。でも、私にとって貴方はかけがえのない宝物でした。それだけは確かです。でも、私は貴方から離れて、貴方の幸せだけを祈ることに決めたのです

さよならの前に、手紙を書きました。これを貴方にとって一番の理解者になる方に渡しました。そして、この手紙は貴方が幸せになるその瞬間に破り捨ててほしいとお願いしました。それで貴方が幸せになった合図としたかったのです。だから貴方は読まないでしょう、でもどうしても、書いておきたかった

どうか、どうか、貴方が幸せであるように.......


×××××××××

「お父さん、この手紙って」
「あぁ、実のお母さんが書いたものだ」
「実のお母さんの手紙?」
「..........すまんな、憂妃」
私が嫁いでから、一ヶ月。お父さんはある手紙を私にみせた。それは私の産みの親である母の手紙
「お前は事故で一部の記憶を失ったんだ。その事故はお前の本当の父親が起こしてしまったんだ。そのせいでお前の母親である姉さんは足を失ったんだ。お前は両親の記憶を失った。姉さんは俺に憂妃を頼むと伝えて、手紙と憂妃を俺達に託して、自殺した」
「..........本当のお母さんが?」
「あぁ、お前の本当の父は事故死でな。姉さんはあの人を本当に愛していた。でも、それ以上に憂妃、お前を愛していた。だから、俺達にお前を託したんだ」
「..........そんなこと、今さら言われたって」
「あぁ、本当はずっと言わないつもりだった。でも、写真がでてきてな。手紙も破れなかった。だからお前に託すよ」
私の手にその手紙を渡されて、正直どうしたらいいかわからなかった。私の本当の母の手紙、それを読んだら涙が止まらなくなった。記憶にないはずなのに、なぜかとても辛くて温かくてどうしたらいいかわからなかった
「憂妃?」
「学さん、ごめんなさい」
「ううん、話はきいたから、手紙よんでもいい?」
私の夫である、学さんに手紙をみせると学さんは
「勝手だよね、死んじゃうなんて。でも愛情が深いや」
「学さん、私ね。この手紙を破ろうと思うの」
「いいのかい?」
「うん、幸せだって産みのお母さんに伝えなきゃね。それが弔いになるだろうし、それに育ててくれた両親にはこれから恩返ししなきゃだし」
「君が決めたならそれでいいよ」
そういわれて、私はそれを静かに破り、そして燃やした。その煙が天まで上ればいいとおもう。
───────さよならの前に先に言わせてね

ありがとう、私を産んでくれて。そして、バカやろう!!忘れたくらいで、私を諦めないでよ!!一緒に生きてほしかったよ!!でも、私は今幸せです!

「さよなら、お母さん」

終わり

8/20/2022, 12:45:06 PM