柳絮

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力を込めて


ドンッバンッガタンッ
「このッ」
ドゴンッガンッダンッ
「くっ……!」
グッグッグッ
「っそ、のヤ、」
ドガンッビタンッベタンッ
「おりゃああああ!!」
ドタンッバタンッグニャン
「はあ、はあ、はあ」
ピピピピ、ピピピピ、ピピピ
震える手でタイマーを止める。思わず深いため息が落ちた。
「やっと終わった……」
しかし全力を尽くした分、上手く行った気がする。
調理台の上には白くて丸くて艶やかなパン生地が、早くも眠ろうとしていた。




過ぎた日を想う

「あ、日付変わってる」
もう寝ないと、と携帯を閉じる手が止まった。10月7日0時9分。ということは。
「昨日、10月6日だったんだ」
丸1日気づかなかったことに、胸がちくりと痛んだ。
もう何年も交流のない、かつての"親友"の誕生日。去年までは当日に気づいて、結局何もしなかった。
でも、忘れたりはしなかったのに。
楽しかった日々が脳裏を過ぎる。
「寝よ」
こうやって日々は過去になるんだな、と思いながら目を閉じた。




星座


「今日のNo. 1星座は、牡羊座⭐︎」
食い入るようにテレビを見つめる。
「気になるあの子に近づけるかも! ラッキーアイテムは水色のハンカチ」
水色のハンカチ持ってたっけ。あ、この前買ったやつ。
バタバタ用意して家を飛び出し、遅刻ギリギリで学校に着いた。汗だくの額をハンカチで押さえる。
「三間、おはよ」
「おっおはよ!」
「そのハンカチ、ゲームのコラボのやつじゃん。好きなの?」
「う、うん」
牡羊座の高坂くんが笑った。

10/8/2023, 2:52:33 PM