5°場

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小学生の頃に好きだった子はやまとなでしこを擬人化したような女の子だった。誰にでも優しく、鉄棒で大車輪が出来て、いつも明るく、字が綺麗だった。
ある時、近所のお墓に鎮座している5基のお地蔵さんが身につけている真っ赤な帽子とマフラーを彼女が毎年作っていると知った。
私は亭主関白人間なので、彼女が酷く理想的な人間に思えた。当時は互いに好き合っていて、毎日のように一緒に遊んでいたが、中学に上がった頃から疎遠になった。大学を卒業した今も彼女を近所で見かけることはあるが、ほとんど言葉を交わすことはなかった。
先日、墓地で彼岸花を見つけて、そんな紅が蘇った。

11/22/2025, 8:34:24 PM