狼星

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テーマ:あなたとわたし #357

「あなたとわたしどっちのほうがつよいとおもう?」
急に下の方から声がした。
見ると小さい5歳くらいの子がこちらを見上げている。
何だ? 
何かの謎掛けか?
「お嬢ちゃん。お兄さんたち忙しいんだ」
同僚がそう言ってその子を追い払おうとする。
その子はじっと俺を見ていた。
そう、彼女はじっと『俺だけ』を見ていたんだ。
「は……?」
急に同僚が吹き飛ばされた。
彼女に触れようとした瞬間だった。
1メートル……いや、2メートルは軽々とんだ。
「お嬢ちゃん、何者?」
俺は冷静に聞く。
「ねぇ、おにいさん。どっち?」
大きく見開かれた2つの目は俺を見ていた。
まるで『逃さない』と言っているかのようだった。
冷や汗が流れるのを感じる。
視線の向こうでは飛ばされ、
気絶している同僚が目に入る。
「お嬢ちゃんのほうが強い」
その子は少しの間俺を見て、
「おにいさんはわからないのね」
何事もなかったかのようにその子はその場を去った。
俺も吹き飛ばされるかと思ったが、
幸いにも彼女に吹き飛ばされることはなかった。
同僚よりも近い距離を彼女が通り過ぎたのに。

11/7/2023, 11:25:46 AM