星野 エナガ

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激戦だった。
「いや〜今回はホント無事でよかったやー」と隣にいる友人が言った。ここは日本。昔は憲法で『平和主義』という戦争という行為を捨てると決められていた国。だが、今やオレやこいつのご先祖サマが見たらビックリの戦争中の国だ。友人の腕には包帯が巻かれている。血でびっしょりのだ。こいつはオレを庇って2発撃たれた。確か、相手はアサルトライフル。しっかりヘッドショットをしてやった。
「あんときはナイスヘッドショットだったよ」
「いや、たまたまだ」 「またまた〜遠慮しちまって」
と友人は笑う。こいつの笑い方は変わっている。いつも
「イリヒハハ!!」とか言って笑う。オレはそんな笑い方が変で  (友人は気にしていて申し訳ないが)笑ってしまう。そんで友人は「お前っていつもつられて笑うな!ギリヒリハ!!」と笑うのがお決まりのパターンとなった。
今、オレはその友人の上半身を持っている。下半身は無い。飛んでった。死んだ。死んでしまった。オレは笑う。
笑わないと、なにか、大切なものが壊れてしまいそうだから。オレは笑う。変で愛しい笑い方で。
「イリヒハハ!!ギリヒリハ!!」

僕にはおじいちゃんがいる。僕のおじいちゃんはとっても変わった(おじいちゃんは傷つきやすいから申し訳ないけど)
笑い方をする。「イリヒハハ!ギリヒリハ!!」ってね。だけど、学校で戦争について調べることになって、聞いたけど、なんでかわかった。僕は悲しくなった。

『大切なもの』より

4/2/2023, 12:37:36 PM