病室
“ありがとう”と窓から手を振る。あちらも手を振りかえす。
入院してからというもの、もう何人来たのかもわからない。花は店が開けそうなほどある。私は花粉アレルギーなのだ。花は要らないと言ってるのに、全員持って来るのだ。飾りようもなく、看護師さんにも困った顔をされる。
本も随分ともらった。まだ読んでいないものがあるのに、どんどん溜まっていく。こちらも、もうすぐ本屋が開けそうだ。
スイーツなどの食べ物は、同室の方々にお分け出来るからまだいい。“いつも賑やかでいいですわね”“いつもうるさくてすみません”この繰り返しも慣れた。
それでも食べきれないものは看護師さん達にこっそり“どうぞ”と言ってある。
たいそう喜ばれる。
お見舞いに来てくれるのはありがたいのだが、もう限界だ。花も本もスイーツもその他の可愛いなんかしらのグッズもベッドの周りに山積みだ。
そう言ってるそばから、今度は大勢が花を抱えて来たらしい。もう無理、さすがに限界、看護師さんどうにかしてください!
もういやーー!
「先生!513号室の例の方、また暴れてます!」
「あー,あの人か。この頃酷くなったな」
「そうですね、鎮静剤を増やしているんですけどね」
「もう何年もいるのにあの人だけなんだよな、誰も見舞いに来ないのって。
意識はないけれど、孤独は感じてるんだろうな。可哀想に」
「ひどいですよね、お花の一つもないなんて」
end
8/2/2024, 2:48:11 PM