狼星

Open App

テーマ:愛情 #377

私が散歩をしていると
公園のベンチで泣いている子がいました。
夕方だったので友達と喧嘩でもしちゃったのかな、
と思いながら近づきました。
その子は顔を両手で覆っていました。
ただ嗚咽だけが聞こえてくる。
私が「どうしたの?」と話しかけると
その子は顔を手で覆ったまま
「愛情がほしいの」と言った。
見た目は小学生くらいで愛情なんて言わなさそうな姿。
でも今の子は愛に飢えているのかもと思い、
隣に座るとその子の頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫」
私がそう言うとその後の嗚咽はだんだん静まっていく。
完全に泣き止むとその子は初めて両手を離す。
そして私の顔を見た。
その時、その後の前髪の間から人間ではありえない
目玉があることに気がつく。
その目玉と目が合うが
その子は何も言わずにニコっと笑った。
「ありがとう、お姉ちゃん」
暗くなり始めた空の闇にのまれるように
その子は消えていった。

11/27/2023, 1:38:44 PM