テーマ:変わらないものはない #44
※この物語は#20からの続編です
クリスマスが終わると一気に年末年始に向けた飾りが市場を彩る。
「みんな忙しそう」
そう呟くミデルは、顔をローブで隠しているが周りは見えているようだ。ミデルは、視覚を色々な場所へ動かすことができるらしい。すべての場所にできるわけではなく、自分の魔力が宿るものにならと言っていたが、すごく便利だ。
人にぶつかりそうになるときも、サッと避けるし。
なにかものを買うときだってローブをしたままだ。
それに、遠距離視覚というものもあるらしい。千里眼に似たようなものらしい。
長時間にわたり魔法を使っていると疲れないのか、そう聞くと少し間を開け、私はこの魔法とずっと付き合ってきたからなぁ…。そう答えていた。僕は聞いてからの間が空いていた理由を察した。
「今日から地下牢への入り口へ行かない?」
そう提案されたのは今日の朝だった。
「でも…。ミデルは…」
「平気だよ。私だって行く勇気がなかっただけだし。まぁ、あの生活には絶対に戻りたくないけどね」
ミデルは平然と言ってるように見せていたけど、手は震えていた。本当は怖いのに、つらいのに行くという覚悟をミデルは決めたのかもしれない。
ここで断ってはいけない気がした。
「うん、わかった。ありがとう。ミデル」
僕が言うとミデルはコクリと頷いた。
それから今に至る。
ミデルによればここから数十時間かかるらしく、朝支度をしてからもうずっと歩き続けている。
まだ冬の寒さが抜けたわけじゃない。だから手や顔など皮膚が出ている場所は冷たくなる。
途中で温かい飲み物を買ったりもしているが、寒いに越したことはない。僕が冷たくなった手に息を吹くと
「寒い?」
そう聞かれた。
「まぁ…それなりに?」
答えるとミデルは右の手袋を差し出す。
「え…いいの?」
僕が聞くと頷くミデル。
「それ着けたら、魔法で温かくする」
ミデルは小さな声で言った。人通りが多く、聞こえづらいはずの声だが、耳元からしてびっくりした。
僕の反応を見てクスクスと笑うミデル。
わざとだ。わざと僕の耳の近くに魔法を発動させて囁いたんだ。
「全く。いたずらしないでもらえます?」
「すんません」
今度は囁きではなくミデルが言った。
ミデルの時々されるいたずらにドキドキさせられる。
でも今回は大目に見てあげようと思う。
これから行く地下牢は、ミデルの辛い過去がある場所。
過去は変わるものではないから。
※♡500ありがとうございます(^^)
応援してくださっている方本当に感謝です。
これからこの物語はどう動いていくのか楽しみにしてもらえると幸いです。
この物語が終わったら、また短編小説を書いていきたいと思っています。
これからも狼星の物語を暖かく見守ってくれると嬉しいです。 ではまた。
12/26/2022, 2:45:12 PM