ぺんぎん

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ラップをかけたまま、口を付けられない湿気ったアップルパイと
ごろごろした琥珀を煮詰めたみたいな色と淹れたての湯気の匂い
ゆらゆらと不安定に波立ち、陽の差すバスルームにはいつでも君が沈んでいる
とっくに冷めて色褪せた唇に注ぐために、紅茶にひとつ角砂糖を落とす
ほどなくして融け合う半透明の粒の煌めきと、だらんと垂れ下がった腕
くすんだカップを口に宛てがう、橙の陽が瞬く浴槽は、まるで違うのに紅茶みたいで
それなら君はたしかに角砂糖なのに、いつになっても融ける気がしなかった

10/27/2022, 12:57:01 PM